岸田首相、税収増に伴う所得税減税を提案
2023年10月20日
10月20日、岸田文雄首相は税収増を国民に還元するための期限付きの所得税減税を検討するよう与党幹部に指示する方針を示しました。首相は「国民への還元については早急に具体化していきたい」と述べ、自民党の萩生田光一、公明党の高木陽介両政調会長らとの会談を予定しています。税収増の一部を国民に還元する方策は「一時的で限定的な還元策」と位置づけられ、23日の所信表明演説で公表される予定です。
また、2024年度の与党税制改正大綱の中で具体的な方針が固められる見込みです。政府・与党は物価高騰対策として低所得者向け給付金やガソリン代補助の延長を盛り込む方向で調整中で、中間層も含めた所得税の減税を検討しています。
22年度の税収は前年比6兆円増の71.1兆円となり、首相は税収増を国民に還元すべきだとの立場を明らかにしています。政府はデフレ脱却に向けた対策が必要とし、経済対策では物価高対策と供給力強化が重点とされる見込みです。
法的効力を持つデジタル遺言書
2023年10月4日
法務省は、デジタル技術を利用して遺言書をオンラインで作成・保管できる新制度の研究を始めると発表しました。10月には、この新制度の導入に関する有識者の研究会の初会合を開催する予定です。目的は、インターネットを利用して法的に有効な遺言書を簡単に作成・保存できる制度を創設することで、デジタル社会に適した円滑な相続を実現することです。
現在、法的効力を持つ遺言書には3種類あります。自筆証書遺言、公正証書遺言、そして秘密証書遺言です。新提案の中で、自筆遺言をパソコンやスマートフォンで簡単に作成し、クラウド上で保管する方法が検討されています。デジタル化することで、専門知識がない方でも遺言書の作成が容易になりますし、ブロックチェーン技術を活用すれば、改ざんのリスクも減少します。
海外の事例を見ると、米国では19年に電子遺言書法を制定し、電子署名があればデジタル遺言が認められるようになっています。一方、ドイツやフランスなどでは、デジタルや録音の遺言はまだ認められていない国も存在します。遺言書は非常に重要な文書であり、本人が亡くなった後にその意志を確認するものなので、電子化に関する議論は慎重に行われています。
日本政府は、このような国際的な事例や意見を参考にしながら、新制度の安全性や効果性を確保する方向で検討を進めていく予定です。
日本の大手銀行がデジタル通貨に注目
2023年9月6日
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)とみずほFGが、企業間の決済に使うデジタル通貨で連携します。2024年にはMUFGの三菱UFJ信託銀行の共通インフラでデジタル通貨が発行される予定で、みずほもこの枠組みに参加します。このデジタル通貨は瞬時に決済ができ、コストはほぼゼロになるため、高コストや複雑な貿易決済を効率的に行えることが期待されます。
三菱UFJ信託は新会社「プログマ」を設立する予定で、デジタル通貨やデジタル証券の発行インフラを担当します。このプロジェクトには3メガバンクグループやJPX総研、NTTデータなどが出資します。みずほ銀行もプログマの枠組みに参加し、デジタル通貨の利用可能な分野を探求します。また、三井住友FGは不動産を裏付けにしたデジタル証券の利用を検討中です。
各行が発行を考えているのは「ステーブルコイン」と呼ばれるデジタル通貨で、その保有には法定通貨の保有が義務付けられています。日本では、改正資金決済法により、このステーブルコインの発行は特定の金融機関に限られています。
ステーブルコインの最大の特徴は、ブロックチェーン上での迅速な決済と、取引情報を組み込むことができる点です。これにより、商品の受け渡しと決済が同時に行えます。特に複雑な貿易決済において、このデジタル通貨は大きな効率化が期待されます。
現在の国際送金は、Swiftシステムを利用して行われることが多く、送金には2営業日以上かかることもあります。また、手数料も約10%と高いため、貿易のコストが増加しています。新しいデジタル通貨を使用すれば、これらのコストや時間を削減できることが期待されます。銀行は、送金手数料の代わりに、ステーブルコインの裏付けとしての法定通貨を運用して収益を得る予定で、具体的なサービス料の設定は今後検討されます。
2024年度予算: GXへの2兆円超投資と日本の脱炭素戦略
2023年8月23日
2024年度の予算の概算要求において、日本政府は脱炭素を目指すグリーントランスフォーメーション(GX)に2兆円以上を要求しました。このうち1.2兆円は2024年度の予算として計上され、残りは次の3〜5年間の予定です。主に、電池、半導体、水素関連機器の国内生産支援や、EVや再生可能エネルギー機器への投資、次世代原発の研究開発、脱炭素分野のスタートアップの育成、そしてEVとFCVの普及促進が挙げられております。さらに、生産プロセスの脱炭素化や持続可能な航空燃料の支援に関する取り組みも検討されております。国際的には、米国やEUも大規模な脱炭素投資を進めており、日本もこれに続いて10年間で150兆円以上の投資を目指しています。政府はまた、GX経済移行債を発行する計画もあり、20兆円の支出を目指しています。新型コロナウイルスや国際的な政治的緊張を背景に、日本は国内生産と米国やヨーロッパとの協力を重視する方針を示しています。
日本の暗号資産取引業界、税制改革への要望書を提出
2023年8月4日
日本の暗号資産に関する自主規制団体である日本暗号資産取引業協会(JVCEA)と、業界団体の日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)が、来る2024年度の税制改正に向けた具体的な要望書を金融庁にご提出したことが31日に明らかになりました。
要望書の中心的な内容としては、現在我が国で暗号資産(仮想通貨)に対して適用されている、最大で55%にも達する総合課税を、英国や米国などと同じように一律の20%にするよう提案しています。これにより、暗号資産の取引や保有が税制上の負担から解放され、より一層の発展が期待できるとの観点からの提案となります。
さらに、同時に次の3年間にわたる損失繰り越し控除の適用を訴えています。これは、投資による損失を繰り越して、翌年度以降の所得税から差し引くことができる制度です。また、デリバティブ(金融派生商品)取引に対する税制改正も求めており、現物取引だけでなく先物などの仮想通貨デリバティブ取引に対する適切な税制が求められています。
その他にも、企業が保有する暗号資産について、期末での時価評価による課税からの除外を求めています。これは、企業が短期売買目的以外で保有している仮想通貨について、期末での時価評価による課税から除外するというもので、ベンチャーキャピタルが企業発行の仮想通貨を保有したり、非代替性トークン(NFT)事業を営む企業が決済目的で仮想通貨を保有したりする際の障害を取り除くことを目指しています。
さらに、仮想通貨同士の交換時の課税を繰り延べ、つまり、仮想通貨を別の仮想通貨に交換した時点では課税せず、それを法定通貨に変えたときにまとめて課税することを検討するよう求めています。ただし、この点についてはステーブルコインを含むべきかなど、さまざまな議論の余地があるため、将来的な要望として提出されています。
これら全ての提案は、政府が次世代のインターネットであるWeb3を成長戦略と位置づけ、国内の暗号資産業界の競争力を強化するために必要な税制改革と捉えられています。
働き方の多様化と防衛費増:税制変革の転換点
2023年7月12日
日本の政府税制調査会(首相の諮問機関)は、中期答申をまとめ、中長期的な税制の方向性を示しました。防衛費や少子化対策などでの歳出増に対して、税収を適切に確保すべきという立場を明らかにしました。消費税の増税には言及せず、しかし安定した財源の確保が重要であると指摘しました。
答申では、歳出に見合った税収確保の「十分性」が租税3原則(公平、中立、簡素)とともに重要と強調。また、社会の変化、特に働き方の多様化(フリーランスの増加など)とデジタル化に対応した税制の必要性を訴えました。特に、フリーランスや個人事業主の増加を踏まえ、「働き方に中立的な税制」の必要性を強調しました。
デジタル化に対しては、スマホアプリ販売など国境を超えた取引への対応を強化することを提案。同時に、自動車税制の見直しを提起し、特に電気自動車(EV)の普及に伴う燃料税収減少に対応した税制改革の必要性を訴えました。
これらの提案は、社会や経済環境の変化に対応した、公平かつ持続可能な税制を求めるものであり、一部の施策に対する財源確保とともに、将来世代への負担の均等化も視野に入れています。中期答申は2019年以来、4年ぶりのものでした。
マイナンバーシステムへの移行:国民の不安と政府の対応
2023年6月25日
政府は、健康保険証のマイナンバーカードへの一体化に関する問題に急ピッチで対応を進めています。先の通常国会で成立した改正健康保険法では、現行の健康保険証の廃止が2024年秋と定められ、その日から1年間は発行済みの保険証を引き続き利用できるという経過措置が取られました。
しかし、マイナンバーシステムへの移行に際し、他人のマイナンバーと誤ってひも付ける事例が続出し、2017年10月〜2023年5月で7372件の誤登録が発見されています。これらの誤りにより、保険資格があるにもかかわらず医療費の10割を請求されたケースも出ており、国民の間には不安が広がっています。
岸田文雄首相は記者会見で、マイナンバーカードへの移行について「国民の不安を払拭するための措置が完了することを大前提として取り組む」と語り、不安が解消されなければ廃止期日を遅らせるか、猶予期間を延ばす可能性を示唆しました。
その一方で、マイナンバーカードの利点を国民に広く理解してもらうことも重要です。マイナンバーカードにより、医療機関間で患者情報を共有できるようになり、患者自身も自身の健康情報をインターネット上で閲覧可能となります。しかし、厚生労働省の調査によれば、マイナンバーカードのメリットを感じていない利用者は56.5%にのぼり、丁寧な説明が必要とされています。政府はこれらの課題に対処しつつ、国民の理解と支持を得られるように努めています。
岸田首相、半導体7社の幹部に日本への投資拡大を呼びかける
2023年5月19日
日本政府は半導体産業の強化に力を入れており、米国や欧州、韓国、台湾の企業が日本への投資を拡大しています。2021年以降、関連企業が表明した日本への投資額は計2兆円超になっています。岸田首相は18日、半導体7社のトップらと面会し、日本への投資拡大を呼びかけました。
半導体は経済や安全保障に重要です。中国を念頭に価値観を共有する国々で供給網を整備する狙いがあり、日本は半導体の製造、研究開発、サプライチェーン、先端素材、精密機械などで強みがあります。市場規模は拡大が続くとみられています。
人手不足や2024年問題に直面する物流業界の経営戦略としてのM&A
2023年5月12日
物流業界は、人手不足や2024年問題に対応するためにM&Aを活用しています。2022年度には30件を超えるM&Aが行われ、大手・中堅企業が地場の同業者を買収するケースが多く見られます。一方で、コロナ禍や価格競争により倒産や赤字営業が増えており、経営環境は厳しいものとなっています。物流業界の再編は海外に遅れていますが、大手メーカーからの物流子会社の切り離しなどもあり、変化の兆しが見えてきています。
物流業界とは、生産者から消費者までの商品の流れを扱う業界であり、運送・保管・荷役・包装・流通加工などの機能を持っています。物流業界の中でもトラック運送業は市場規模が大きく、中小企業が多数を占めています。しかし、運送・物流業界は人材不足や競争激化などの課題に直面しており、2024年4月からは自動車運転業務の時間外労働規制が強化されることで、さらなる影響が懸念されています。
こうした中で、M&Aは経営資源の選択と集中や事業承継の解決策として利用されています。近年はEC市場の伸びに伴い、物流ニーズが高まっており、規模拡大やエリア拡大を目指す企業が積極的にM&Aを行っています。また、コロナ禍によって経営環境が悪化した企業や子会社もM&Aで切り離されるケースが増えており、物流業界の再編が進んでいると言えるでしょう。
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